空き家問題とは

空き家問題は、日本の現代社会が直面する深刻な課題の一つです。

人口減少や高齢化、都市部への人口集中など様々な要因が背景にあります。

これにより、地域社会の活力低下や経済的損失、防犯上のリスクなどが発生しています。

本記事では、「空き家問題とは」何か、その原因や影響、解決策について詳しく解説します。

「空き家問題」とは?

日本全国で空き家(使用されていない住宅)が増加し続けています。

日本における空き家の増加にはいくつかの主要な原因があります。

まず、人口減少が大きな要因です。

総務省統計局が2024年4月に公表したデータによると、2023年(令和5年)10月1日時点で、日本人人口は1億2119万3千人で、前年に比べ83万7千人(-0.69%)の減少となり、12年連続で減少幅が拡大しています。

人口減少に加えて、地方部では若者が都市部に移住する傾向が強く、残された家が空き家となります。

さらに、高齢化社会の進展により、住む人が亡くなった後に家がそのまま放置されるケースも増えています。

また、相続の問題も空き家問題を悪化させています。

例えば、家を相続した子供たちが遠方に住んでいるため、自ら使うことができず、管理も難しいという状況で、特に急いで売却する必要もないということから、そのまま放置しているというケースも多くあります。

こういった様々な理由で増えている空き家は、安全面、衛生面、治安面、景観面などで地域社会に様々な悪影響が出始めています。

これを「空き家問題」といいます。

空き家の現状

令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、総住宅数のうち、空き家は900万戸と、2018年(849万戸)と比べ、51万戸の増加で過去最多となっています。

総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、こちらも過去最高となっています。

空き家数の推移をみると、これまで一貫して増加が続いていて、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっています。

  • 空き家数は900万戸と過去最多、2018年から51万戸の増加、空き家率も13.8%と過去最高
  • 賃貸・売却用や二次的住宅(別荘など)を除く空き家が37万戸の増加
令和6年4月30日 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果

空き家放置による問題

空き家問題は地域社会にも多大な影響を及ぼします。

空き家が放置されると、以下のような問題が発生する可能性があります。

建物の倒壊の危険性

建物の倒壊の危険性

老朽化が進んだ空き家は、台風や地震などで倒壊する危険性が高くなります。

倒壊すれば、建物の破片などで人が怪我をしたり、隣接する建物や車両が破損する可能性があります。

放置された空き家が原因で、人がケガをしたり、物を壊したりした場合は、その空き家の所有者は多額の損害賠償を請求される可能性があります。

民法第709条により、故意または過失によって他人の権利を侵害した者は、それによって生じた損害を賠償しなければならないと定められています(過失責任の原則)。

放置された空き家が原因で、人がケガをしたり、物を壊したりした場合は、その空き家の所有者は多額の損害賠償を請求される可能性があります。

名古屋市役所HP 空き家所有者の皆様へ

衛生面の悪化

衛生面の悪化

管理されていない空き家では、雑草や樹木が繁茂しやすくなります。

雑草や樹木は、景観を損なうだけでなく、害虫・害獣の隠れ家になったり、火災の原因になったりする可能性があります。

また、放置された枝葉は排水路を塞ぎ、雨水や地下水が溜まって汚水が滞留する可能性があります。

汚水は悪臭や病原菌を発生させ、蚊などの発生源となり、感染症を引き起こすリスクもあります。

景観の悪化

景観の悪化

放置された空き家は、周辺地域の景観を悪化させ、治安の悪化にもつながる可能性があります。

「割れ窓理論」という言葉を聞かれたことはありますでしょうか。

「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴となり、やがて他の窓もまもなく全て壊されてしまう傾向が高くなり、治安も悪化していく」という理論です。

例えば、街の路上に落書きがあると、他の落書きやゴミ捨てが増えていき、治安も悪くなる傾向があるというものです。

空き家が増えることで、景観が悪くなるというだけではなく、治安の悪化にもつながる可能性があります。

防災上の問題

防災上の問題

空き家は窓や扉の管理が行き届いていないケースが多く、侵入窃盗や放火の標的になりやすいと言えます。

また、ゴミや粗大ゴミの不法投棄の場所となったり、不法侵入して違法行為をする拠点となってしまう可能性もあります。

空き家のトラブルに関しては、政府広報オンラインの「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を! 空き家を放置すると、どんなデメリットがあるの?」でも説明されています。

空き家問題への対策

空き家問題を解決するためには、行政、地域住民、民間事業者などが連携して取り組むことが重要です。

空き家対策の事例を一部ご紹介します。

行政による対策

空き家に関する法整備

2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、特定空家に対して行政命令による措置が可能になりました。

特定空き家とは以下の状態にあてはまるものです。

  • ① そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • ② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • ③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空家と認められると、市区町村は所有者に適切に管理をするように「助言」や「指導」を行い、それでも改善が見られない場合は「勧告」や「命令」を行います。

所有者が命令に従わない場合、50万円以下の過料に処される場合があるほか、行政による強制撤去等の対応が行われる場合もあります。

空き家相談窓口の設置

多くの自治体で、社団法人やNPO法人などとの提携も含めて、空き家に関する相談窓口を設置しています。

空き家の活用促進

空き家を解体・リフォームして新たな住居として活用したり、地域交流施設などに転用したりする取り組みが進められています。

民間事業者による対策

民間空き家対策東京モデル支援事業」に採択された取組をご紹介します。

株式会社こたつ生活介護

空き家になる主な原因は、そこに住んでいる人が高齢者施設等に入居されるか、逝去された場合のどちらかです。

住んでいる方が元気なうちに空き家にしないように、手を打つことが大切です。

具体的には、将来の我が家の在り方や想いを『活き家宣言書』に記し、『活き家』登録を行います。

『活き家』情報紙や『活き家』見学会への参加を促し、将来の住まいの在り方のイメージを高めます。

空き家活用株式会社

地域の中で空き家となっている住宅について、その状態や数などの実態を効率的に調査するため、人工衛星による熱赤外画像等のリモートセンシングデータと当社が保有する空き家情報を、AI(人工知能)を活用して分析し、空き家が多いエリアをリアルタイムに検出する技術を実証します。

従来の空き家調査方法では、東京都全体の調査となると数十億円の予算が必要となると考えられます。

衛星やドローンによるリモートセンシングデータをAIで分析し、調査を行うことで、空き家を検出する単価1件あたり、現地調査の最大100分の1程度になることが期待されます。

株式会社スピーク

事業用の建物が空き家化する際のプロセスに着目し、事業を行う。

事業用に使っている建物では、住居と異なり事業の縮小や廃止、移転などにより空きが生じるが、一般的には事前に計画を立ててこれらが実行され、将来的に元の稼働状態に戻ることがない。

また本事業で対象としている小規模な製造業等の事業用建物等では、事業者が建物所有者である場合が多い。

このため事業者に対し、事業縮小や廃止等に先立ち建物の活用方法等の情報を提供することにより、縮小や廃業の際に空きが生じることを防ぎ、活用へとつなげることを目指した。

まとめ

まとめ

空き家問題の解決は、地域社会全体の課題です。

政府、自治体、民間企業、地域住民が一体となった取り組みが求められます。

まず、法制度の整備と実効性の確保が重要です。

次に、空き家の利活用を促進するための支援制度や情報発信が必要です。

さらに、地域の特性に合わせた柔軟な対策を展開し、成功事例を他の地域に広めることが効果的です。

最後に、地域住民の意識向上と協力が不可欠です。

持続可能な地域社会を目指し、皆で協力して空き家問題を解決しましょう。

空き家問題に関する参考情報