近年、全国的に空き家が増加傾向にあり、それに伴って空き家での火災も問題となっています。
なかでも恐ろしいのが、「収れん火災」と呼ばれる火災の形態です。
収れん火災は、発見が遅れがちで、気づいた時には手の施しようがないほど火勢が強くなっていることが少なくありません。
本記事では、空き家の収れん火災について、その特徴や対策について詳しく解説します。
収れん火災とは
収れん火災とは、太陽光がレンズのような役割を果たす物体により一点に集中し、その結果、可燃物が発火する現象です。
この現象は、光が特定の角度で物体に当たることで、非常に高い温度が生じ、それが引火点を超えることによって発生します。
例えば、ペットボトルやガラス瓶、鏡などが太陽光を集めて高温となり、下にある紙や枯葉などが燃え始めることがあります。
これらの物は、一見無害に見えるかもしれませんが、光の集中効果によって非常に危険な状況を引き起こす可能性があります。
特に空き家では、こうした物が適切に管理されていないことが多く、収れん火災のリスクが高まります。
収れん火災の「3つの原因」
「太陽光」「光を屈折または反射させる物」「可燃物」の3つの条件が揃った時に、収れん火災が発生する可能性が高まります。
- 太陽光: 収れん火災は太陽光が原因で発生するため、太陽光が強く差し込む時間帯が特に注意が必要です。
- 光を屈折または反射させる物: 太陽光を一点に集めるためには、レンズ効果を持つ物が必要です。これには、透明なペットボトル、ガラス玉、鏡、拡大鏡、ステンレス製のボールなどが含まれます。これらの物体が太陽光を屈折または反射し、光を一点に集中させます。
- 可燃物: 集中した光が当たる場所に可燃物があると、発火の危険性が高まります。新聞紙、ドライフラワー、木片などが例として挙げられます。
以下に、それぞれの原因を詳しく見ていきたいと思います。
【原因1】太陽光
収れん火災は、日差しの強い夏場におこりやすいと思われる方も多いと思いますが、実際には太陽の高度が低く部屋の奥まで日光が届く冬にも多く発生します。
さらに冬は空気が乾燥しやすく、可燃物が引火しやすい状態になり、火災が発生するリスクが高まります。
【原因2】光を屈折または反射させる物
収れん火災は、レンズのような役割を果たす物が太陽光を一点に集中することで発生します。
太陽光を一点に集中させる物はいろいろありますが、その代表的なものをご紹介します。
ペットボトル
ペットボトルは中が空である場合でも、透明なプラスチックがレンズのように作用し、日光を一点に集中させることがあります。
これにより、下にある可燃物が発火するリスクがあります。
鏡やガラス製品
鏡や装飾用のガラスオブジェなどは、太陽光を反射して一点に集めることがあります。
特に凸面鏡や凹面鏡は収れん効果を強め、火災リスクを引き起こします。
空き家の室内に置かれた鏡が、窓から入る日光を集中させて可燃物に当たると、発火する危険性があります。
ガラス瓶
ガラス瓶もペットボトルと同様にレンズ効果を持ちます。
特に丸みを帯びた瓶は、光を一点に集めるため、下にある草木や紙などが燃えやすくなります。
空き地や庭に放置されたガラス瓶は、収れん火災の原因になりやすいのです。
老眼鏡やメガネ
太陽の当たる場所にメガネを放置すると、レンズが虫眼鏡のように光を集めてしまうことがあります。
特に老眼鏡などの凸レンズは、光を集めやすいため要注意です。
レンズが光を集めると、その焦点で非常に高い温度が生じ、放置された場所にある可燃物に引火する危険性が高まります。
水晶やガラス玉
水晶やガラス玉などの装飾品も、光を屈折させて一点に集中させることがあります。
インテリアとして飾られることが多いこれらの物体も、日光の当たる場所には置かない方が良いでしょう。
特に、大きな水晶や複雑な形状のガラス玉は、光を集めやすく高温を生じる可能性があるため、火災のリスクがさらに高まります。
【原因3】可燃物
収れん火災は、レンズのような役割を果たす物が太陽光を一点に集中させたところにある物が蓄熱・発火することで発生します。
発火するものもいろいろありますが、特に注意するべき物の一例を以下にご紹介します。
ガラス製品や鏡の近くにある紙類
窓際に置かれたガラス製品や鏡が、太陽光を一点に集中させることで火災の原因になります。
そのため、窓際に新聞や雑誌、ダンボールなどの紙類を置くのは非常に危険です。
特に、ガラスの容器に水が入っている場合はレンズ効果を強める可能性があり、より危険です。
プラスチック製品
プラスチック製品も収れん火災のリスクを高めます。
透明なプラスチックのボトルやペットボトルは、光を屈折させて一点に集めることがあり、火がつきやすい環境を作り出します。
これらのボトルを窓辺に放置することは避けましょう。
観葉植物の乾燥した葉や土
観葉植物の葉が乾燥している場合、それは収れん火災の原因になりえます。
特に、植物の周りに乾燥した土や枯れた葉がある場合、太陽光が集まることで発火のリスクが高まります。
観葉植物は直射日光の当たらない場所に置くことをおすすめします。
収れん火災の予防法
それでは、収れん火災ができるだけおこらないようにするための予防法を考えていきたいと思います。
【予防法1】物の配置に注意する
空き家内や庭にペットボトル、鏡、ガラス瓶などの光を集中させる物を放置しないようにしましょう。
特に日光が直接当たる場所にはこれらの物を置かないようにすることが大切です。
できるだけ光を反射しない場所に収納したり、不燃性のカバーを掛けるなどして管理しましょう。
【予防法2】カーテンやブラインドの活用
空き家の窓にはカーテンやブラインドを設置し、日光が直接室内に入らないようにすることも効果的です。
これにより、光が反射して一点に集中するリスクを減らせます。
【予防法3】定期的な巡回・点検
空き家は定期的に巡回・点検することが重要です。
長期間放置された空き家にはゴミや落ち葉などがたまり、それが収れん火災の発火源となることもあります。
定期的に掃除を行い、危険物がないか確認することが大切です。
【予防法4】防犯カメラやセンサーの設置
防犯カメラやセンサーを設置することは、収れん火災の予防には直接関係ありませんが、火災の早期発見のために有効です。
防犯カメラは不審者の侵入を防ぐためにも有効ですので、火災発生や不審者の侵入を早期に発見できるため、より安全性が高まります。
まとめ
空き家の収れん火災は、ペットボトルや鏡、ガラス瓶など、日常的に見られる物が原因で発生します。
これらの物を適切に管理し、日光が集中するのを防ぐことで火災のリスクを減らすことができます。
定期的な点検や巡回も重要ですので、空き家を持つ方はぜひ参考にして安全を守りましょう。